交通ルール啓発ブログ
プリウスのブレーキが利かない?「感覚の違い」が一転、リコールへ
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トヨタ製ハイブリッド車の草分けプリウスの3代目モデル(最新型)と、去年発売されたばかりのSAI。 |
既にニュース等でご存じのことと思いますが、トヨタ・プリウス(ZVW30型)を始めとするトヨタ製ハイブリッド車に採用されているブレーキシステムが一定の状況で作動せずに空走することが明らかになり、トヨタが国交省にリコールを申告する事態に発展しています。 元は、北米仕様プリウスのアクセルペダルにフロアマットが挟まってしまう不具合をアメリカのメディアが伝えたことから「プリウス欠陥車報道」が始まったのですが、更にブレーキが効かないとの苦情がアメリカや日本で寄せられていたことが明らかになりました。 本日のエントリーは、これまで「プリウス・リコール騒動」の動きを振り返ってみたいと思います。 |
踏んでから数秒間「ブレーキが抜けた」状態で空走するのだそうです。傾斜地などによっては一瞬、速度が時速数キロ上がるとの実験結果もあるようです。この不具合が原因とみられる追突事故も去年の7月に千葉県松戸市の国道6号線上で発生しており、国土交通省にこれまで寄せられたブレーキ不具合による報告は13例、アメリカに至っては国家道路交通安全局(NHTSA)に寄せられた同種事例は100件を超えていたのです。
- 濡れたマンホールの蓋・凍結した路面・路面の段差などの低μ路で
- 時速35キロ前後の速度域から
- ABSが作動しない程度に軽くブレーキを踏むと
ところで、アメリカでトヨタがリコール騒ぎを起こしたのは今回が初めてではありません。
それは、去年8月、カリフォルニア州のハイウェイを走行していた「レクサスES350」のアクセルが戻らずおよそ時速190キロで交差点に進入して土手に落下、乗車していた日系人女性とその家族4人が死亡する事故が発端でした。NHTSAの調査で、ES350にRX350用フロアマットが誤って取り付けられており、そのフロアマットがずれてアクセルペダルに挟まれ引っ掛かったことが原因であることが判明しました。この事故からピン止めされているトヨタ車のフロアマットが外れやすく、アクセル・ペタルに挟まれやすいと、消費者団体「コンシューマー・リポートズ」、自動車ブログ「キッキング・タイヤズ」からも指摘され、トヨタは去年11月に主力車種「カムリ」や「プリウス」を含む7車種426万台のリコール案件を抱えることなってしまったのです。
更に、今年1月にはアクセルペタルとの接点である、「フリクション・レバー」(米CTS社製)の噛み合わせ部が温度差による結露などで引っかかり、アクセルが戻らなくなったりアクセル開度が伝わらなくなる不具合があることが分かり、「プリウス」や「カローラ」など8車種230万台のリコールがあった矢先の、今回の出来事だったのです。
| 種類 | 内容 |
| リコール | 自動車の構造・装置・性能が保安基準に適合していないか、しなくなるおそれがある状態に、その原因が設計か製造の過程にある場合、国土交通省に原因や改善内容などを届け出て無償修理する。(道路運送車両法63条の3) |
| 改善対策 | 自動車の構造・装置・性能が保安基準に適合していないか、しなくなるおそれはないが、安全上や公害防止上放置できないか、できなくなるおそれがある状態に、その原因が設計か製造の過程にある場合、国土交通省に原因や改善内容などを届け出て無償修理する。(運輸省自動車交通局長依命通達・平成6年自審1530号 ) |
| サービス・キャンペーン | リコールにも改善対策にも該当しないが、操作性向上・品質改善の措置が必要と独自に判断した場合、国土交通省に原因や改善内容などを届け出て無償修理する。(運輸省自動車交通局長依命通達・平成6年自審1530号 ) |
トヨタの品質保証担当常務役員は「ブレーキペタルを踏んでからブレーキが効くまでのタイムラグが、違和感として感じられるに過ぎない」旨述べてブレーキシステムに欠陥があることを明確に否定しましたが、一方で「アンチロックブレーキ(ABS)の電子制御に苦情の原因があると判断し、今年1月末から制御ソフトの設計を変更した」ことを認め、「サービスキャンペーン」による改善措置を考えていたようです。すなわち「ブレーキはちゃんと聞いているので欠陥ではないけど、顧客の皆さんの評判が悪いので、品質向上の一環でフィーリングを良くしておきますよ。」というのが会見の論旨だったようです。
| 日本でリコールの対象となったのは前述の「プリウス(ZVW30型)」のほか、去年12月に発表された国内専売の高級セダン「SAI」【写真左上】、レグナスブランドで販売されるSAIの姉妹車「HS250h(北米仕様:HS hybrid)」【写真右上】、官公庁・選定自治体・電力会社にリースという形で供給する国内専用車「プリウス・プラグインハイブリッド」の3台。いずれもZVW30型プリウスと同じ回生ブレーキ機構を持っています。 |
さて、今後の成り行きで注目すべきなのは、米議会がトヨタの豊田章男社長を公聴会に呼ぶという動きがあるということです。自国法人の責任者を召喚することは珍しくありませんが、米議会で証言させられた日本法人の責任者は、過去一人もいません。冷戦下、西側諸国が東側陣営に軍事技術や軍事転用技術につながる製品の輸出を規制することを定めた、ココム(対共産圏輸出統制委員会)の協定を東芝が無視して、当時のソ連に「金属加工旋盤機械」を無許可で輸出した「東芝ココム違反事件」が起こったときでも、東芝の社長を公聴会に出席させるということはありませんでした。
![]() 1981年3月3日、米イリノイ州のフォード社シカゴ工場にてハンマーで日本車(75年式トヨタカローラ)を叩き壊すデモを行う工場労働者。看板にはUAW(全米自動車労組)支部の声明として、「お前らがアメリカで車を売りたいのなら、アメリカで組み立てた車を売れ」と書かれている。(AP) |
日本の自動車メーカーは、かつて「ジャパン・バッシング」と呼ばれる日本製品排斥運動を味わいました。オイルショックや大気汚染の社会問題が深刻になっていく中で、燃費向上や排ガス中のCOx・NOx低減の技術で優位に立った日本車が70年代後半から80年代前半に全米の小型車市場を席捲していきます。ホンダのCVCCアコードがいい例ですね。しかし、日本車の輸出が好調であったことと引き換えにアメリカ企業が日本に売り込むに際しての型式認証の障壁が露呈し、アメリカの対日貿易赤字が深刻となります。ビックスリーの売上が落ち込んで工場閉鎖(ロックアウト)が相次ぎ、失業した従業員たちは「日本車」への憎悪を深めます。俗に言う「日米自動車摩擦」の始まりです。 |
これに対し、トヨタ・日産・ホンダの日本車メーカーは米国内に工場を建設して北米で販売する車両を全て現地生産に切り替えてアメリカ人を雇用したばかりか、トヨタとホンダは北米仕様に開発された現地量産車を日本の国内ディーラーで販売(いわゆる「逆輸入」)し、販売拡大に努めてきた歴史があります。「郷に入らば郷に従え」のことわざが功を奏した例と言えるでしょう。
前述の「フロアマットが挟まってアクセルペタルが戻らない」とのアメリカの欠陥車報道も常日頃から点検すれば未然に防げたのかも知れません。過去にあった「マクドナルドのドライブスルーで買ったコーヒーを内股に挟んでいたら溢してしまって、大火傷を負ったから損害を賠償しろ!」と主張するのと同じで、アメリカ人のルーズさを棚に上げたクレームという感じがしないでもありません。しかし、このような声にも対処しなければ「カスタマー」は納得しないのでしょう。昔は笑い話にさえ思えたこのようなクレーム話でも最近の日本人に同程度の鈍感な人間が増えつつあるようで、日本でも同様の「モンスタークレーマー」騒ぎをよく聞きます。
トヨタのもたつきを見た米メーカー側は「起死回生」とばかりに販売攻勢に打って出てきており、ゼネラルモータース(GM)では2月末までの限定ながらトヨタ車からGM車に買い替えると、1000ドル(約9万円)のキャッシュバック+金利ゼロの自動車ローンが組める、という販促策を実施しているそうです。
正常な市場原理でシェア競争をするぶんには何も指摘することはないのですが、アメリカ政府が破たんした自動車業界の後ろ盾になって、保護政策に出ることのないようにしてもらいたいです。何せ、アメリカは自由経済主義国家の雄なのですから。
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