交通ルール啓発ブログ

そろそろ内燃機関と決別の時?・・・遂にEVタクシーが街へ走り出す!

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EVタクシー

温暖化抑制の観点から、更に需要が求められる電気自動車(EV)。数年前まで公道を走るEVといえば某テレビ番組で有名なソーラーカーぐらいなものでしたが、最近は交通機関にEVを採用する動きが広がっています。そんな中、今年4月から3ヶ月間限定で環境ベンチャー企業「ベタープレイス・ジャパン」が東京のタクシー会社・日本交通と提携し、世界初の試みとなる「バッテリー交換方式」でのEVタクシーの試験運用を六本木ヒルズをベースに開始しました。
そこで、今回のタクシー運用実験の目的を伺いに、事業展開の核となる東京・虎ノ門のバッテリー交換ステーション(BSS)を訪ねました。

今回のエントリーは、同社主催のブロガーミーティングに参加させて頂いたことによるものです。また、一部画像については別の日に撮影したものであることも併せてご了解下さい。

それではまず、各国が本格的に取り組み始めた温室効果ガス抑制政策を取り巻く事情を簡単に説明しておきましょうか。
「20世紀最大の発明品」と言っても過言ではないガソリンエンジンをはじめとする内燃機関は、生活の利便性の向上に貢献してきた一方で化石燃料の枯渇やCO2などの温室効果ガスによる環境破壊が、40年以上もの間に亘って社会問題として指摘され続けています。21世紀に入った現在、燃費やCO2を大幅に抑制したクリーンエンジンやモーターと併用するハイブリッド車(HV)が登場してきましたがいずれも過渡期のものというべきものであり、次世代のエンジンとして「水素エンジン搭載車」と「電気自動車(EV)」の二つに絞られてきた感があります。
とりわけ近年、石油依存からの脱却など大幅なエネルギー転換を謳う「エネルギー自立安全法保障法」を制定したアメリカでは、次世代エネルギー技術を搭載する自動車を生産するメーカーに対して総額250億ドルもの特別融資を行う制度(Advanced Technology Vehicles Manufacturing Incentive Program)を2008年11月に創設、2009年6月にはEVで先鞭を付けるフォード・北米日産・デスラモータースにそれぞれ59億ドル・16億ドル・4億6500万ドルの融資を発表しましたし、EUを代表して欧州投資銀行(EIB)は2009年4月にルノー日産・ジャガーランドローバー・フォルクスワーゲンの3社にそれぞれ4億ユーロ・3億6600万ユーロ・1億ユーロの融資を決定、更にドイツでは水素エンジンや燃料電池開発メーカーに2007年から2016年の10年間で7億ユーロを供与するなど、既に「先端技術企業の囲い込み」を始めています。
もちろん、技術立国である我が日本もこの潮流に無関係ではいられません。2008年7月に麻生内閣は「低炭素社会づくり行動計画」を閣議決定し、2020年までに新車販売台数の半数をEV・HV・CNG(天然ガス自動車)などのCO2低排出または無排出車にする、との指針を示しました。これに基づき経済産業省と内局の資源エネルギー庁は、EV普及のためにはまず充電スタンドの整備が先決と考え、スタンド設置をおこなう民間企業への助成を目的とした「電気自動車普及環境整備実証事業(スマート・オアシス・プロジェクト)」を開始したのです。前述の「ベタープレイス・ジャパン」も事業受託企業としてプロジェクトに参画している民間会社のひとつ。

ベタープレイスジャパン
てな訳でBSSに行ってみると、タクシーにも使われている「日産デュアリス」がでーんと前に置かれています。この車両は事業開始に先立ち、去年4月~6月に横浜の山下町で行われた「バッテリー交換実証試験」で使用された車両なんですね。
デュアリスのEV仕様はカタログモデルは無論、
日本の日産自動車では試作車でさえないので、有名なカロッツェリア「東京R&D」が米UQMテクノロジーズ社製EVユニットに換装。アメリカで改造して型式認証を受けずに国内に持ち込んだので、一時輸入を示す「Tナンバー」を付けているんだとか。初めて見ましたよ、Tナンバー!icon:face_surprised
better_place_EV.jpg

それでは車両やBSSの内部を、順番に見ていきましょう。

EVタクシー_ボンネット
EVタクシー_プラグ

エンジンルームであったスペースには、駆動に必要な三相交流300vの電圧を電装用の12vに変換するインバータの下に駆動用DCブラシレスモーターが組み込まれているそうですが上からでは全く見えません。従来のフェールリッド【下】に加えてフロントクリルのエンブレム裏にもチャージプラグが付いているのは、EVのトレンドといえますね。こっちは家庭用電源からコネクトするプラグなのでしょうか。
もっとも、ベタープレイス・ジャパンが主位的に推し進めているのはバッテリー交換方式であって、プラグインチャージはあくまで途中でバッテリー残量が無くなったなどの「緊急避難的なもの」であると力説していましたけども。

EVタクシー_ベタープレイス

さて、ここからは日交のEVタクシーがバッテリー交換を実演するデモに移ります。

タクシーがBSSのレーンに入ってくると、エアブラシの上を通過してアンダーフロアの汚れを取っていきます。ほこりくらいならばエアブラシで充分に落ちるのでしょうが、「泥や雪ならばどうなのか?」と小生が説明役の女性に聞いたところ、

・・・・問題ないと思います!多分・・・

とのお答えでした。icon:face_embarrassed

天蓋_バッテリ交換ステーション

車両を搬入口の真下まで進ませると、自動的にスライドハッチが開きバッテリー交換用のピットが見えてきます。(←いや、モニターで映し出されるのであって肉眼では見えません・・・icon:face_embarrassed

バッテリー交換ステーション_ベタープレイス

BSS内には充電機を兼ねた12基分のバッテリーラックがあり、バッテリーパックが常備されています。ここからクレーンがバッテリーパックを降ろし、「トラバーサー」と呼ばれるコンベアに載せ換えてバッテリーパックを搬入口に持っていきます。そして搬入ハッチ下にある「リフター」が使用済みバッテリーを降ろすとともに、充電済みのバッテリーを車内にセットします。

バッテリー交換_ベタープレイス

こちらが「リフター」と呼ばれるバッテリーパックの受け皿。使用済みバッテリー用と充電済みバッテリー用の2台1組でパンダグラフ式で上下するようになっています。
まず、空のリフターが搬入ハッチの真下にセットされて使用済みバッテリーを抜き出します。そして、一旦写真手前のデッドスペースにトラバーサーが移動すると、今度は充電したバッテリーがちょうどリフターの真上(搬入ハッチの真上)に来るようになっており、スムーズに取り換えられるように工夫されています。

EVタクシー_バッテリー交換

バッテリー交換中のタクシーを正面からみた図。
ベタープレイス・ジャパンが採用するシステムは剥き出しのバッテリーバックを吊り下げる方式であることから安全性が気になりますが、強烈なG(重力)にも耐え得る戦闘機の増槽(使い捨て燃料タンク)や爆装の接合部品(ラッチ)を基にした構造になっており、担当者は「安全性には絶対の自信を持っている!」と話していました。

インパネ_iphone_EVタクシー

今度はEVタクシーのインパネを見てみましょう。
乗務員証やタクシーメーターなどの必需品に紛れて何とiPhoneがありますね!現在はタクシー会社の配車センターとタクシーとの連絡方法は従来の音声無線でやり取りするほかに、AVM無線(タクシーメーター下の「貸切」の液晶画面が表示されている機械がディスプレー部)で、「空車」又は「実車」であるかの情報やタクシーの位置情報を配車センターに知らせたり、配車センターで受けた迎車先の周辺地図をタクシーのカーナビに送信するなどのデータ通信手段をタクシー専用無線を使って用いていますが、iPhoneは更に燃費やバッテリー残量を管理するなどタクシーの状況そのものも配車センターが把握することができることを利点として挙げていました。

テレメトリー_EVタクシー

こちらがiPhoneから送られたデータをパソコンで表示するとこうなる、の図。画面右側のオレンジ色のバーグラフはバッテリーの残量を表しているそうです。
関係者に話を聞いたところでは、これらのデータがEVタクシーを運用している日交が参考にしているのでもベタープレイス・ジャパンが実証試験のデータ取りに利用しているのでもなく、単にデーターの有用性をディスプレーで可視化しているだけだそうです。なお、ベタープレイス・ジャパンではEVタクシーの運行状況をPC・携帯・iPhone専用サイトで公開するとともに、なんとTwitterでも自車位置情報と車両走行(「空車」「実車」「回送」)から自動で判断して「つぶやく」機能もあるんです!

で、実際にEVタクシーに乗ってみたりもしました。(ものの30秒程ではありましたが・・・icon:face_embarrassed
デュアリスは車高が高いので私にとっては乗降が大変し易かったのですが、床下も高いので年配の方にはちょっと苦労するだろうな、と感じました。

ここまではEVタクシーについてみてきましたが、「ベタープレイス社」の事業展開についても興味をそそられましたので簡単に触れておきたいと思います。

「ベタープレイス社」のEV普及事業は日本だけでなくイスラエル・デンマーク・アメリカ(ハワイ)・オーストラリアでも行われているのですが、EVタクシー事業を展開しているのは日本だけで、他の国は全てバッテリー交換式EVではなく汎用のプラグインEVの普及を推進するとともに、主に「チャージスポット」と呼ばれる充電スタンドを駐車場や路上駐車帯に設置する計画や、更にEV動力源確保のための風力発電機建設や太陽光発電用ソーラーパネル設置に主眼が置かれているんですよね。
世界で自動車登録台数では中国に大きく差を広げられたものの未だに高い潜在購買力を保っており、かつエコロジー意識も欧米に引けを取るものではないのに、何故、日本のEVマーケットへダイレクトにつながる充電スタンド整備事業の参入ではなく、タクシー事業による交通インフラ参入という選択をした理由が、どうしても小生は解せなかったのです。
ベタープレイス社(米)はルノー日産と技術提携を締結し、ハワイでのEV実証試験に「米国製デュアリス」ことローグ(ROGUE)のEV試作車を採用している。なお、EVシステムは小生が調べた限りでは英国日産(NMUK)製の「カシュカイEV試作車(Qashqai EV Pro)」と同様のプラグインチャージ方式と思われる。なお、ベタープレイス・ジャパンと日産自動車との間には直接の技術的な連携は全くないという。

Photo by Better Place

小生の疑問にベタープレイス・ジャパンの藤井清孝社長は、こう答えました。

東京のタクシーはロンドン・パリ・ニューヨークのタクシーを合わせたよりも多い6万台のタクシーが稼働していて、都内の自動車登録台数の2%に過ぎないタクシーのCO2 排出量は全体の20%を占めている。これを0%にすることで与える影響は計り知れない。また、東京のタクシードライバーは道もろくに知らないニューヨークなどの移民ドライバーと異なりサービス面でレベルが高くて評判が良い。「街の顔」というべきタクシーのゼロエミッションに貢献したという情報を発信できる。
また、イスラエル(人口約710万人)やデンマーク(人口約550万人)は人口が少ないがゆえに直接EVインフラに参画しても「テストマーケティング」の範疇であるが、東京(人口約1300万人)では「本チャン(本番)」になる。
ベタープレイスジャパン社長_藤井清孝氏

EV市場へ参入するにおいて、最大のベネフィットより最小のリスクを勘案したということなのでしょうか。既に日産や三菱が充電インフラを一体とした車づくりをしているという現状からあまりに「旨味がない」と敢えて避けたのかも知れないな、と小生は話しぶりから感じ取りましたが・・・。

他方、米カリフォルニア州では自動車メーカーに対し、2015年から各社ごとの自動車生産台数の14%をEVや水素自動車などのゼロエミッションビークル(CO2無排出車)にすべしという条例が成立し、クリアしないとカリフォルニアではそのメーカーの自動車は一切販売することができなくなります。つまり、電気自動車は「夢の車」ではなく、造り出さないとそのメーカーの存続にかかわるところまで来ている訳です。すなわち、そろそろグローバルEVシステムのプラットフォームが決められなくてはならない時期にきている現在、このベタープレイスがどのようなアプローチをしていくのか・・・他のメーカーと連携してEVシステムをプラグインチャージ式に統一することに賛同するのか、バッテリー交換式で独自性を進むのか、併用していくのかの選択に注目の目が集まるものと思います。
また、EV共同開発についても自動車メーカーの巨人ルノーと手を結ぶ一方で、中国の独立系自動車メーカー「チェリー自動車(奇瑞汽車)」にも接近するなど、激烈が予想される今後の中国EV市場においてプラットフォーム造りの中核に躍り出るかも知れないとの感触を強く受けました。私見ながら、自動車業界において注目すべき企業の一社になることは間違いないと断言しておきましょう。


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